
Louis Poulsen照明と北海道産材が調和するラウンジバー
目次
- ユーロJスペース実績:北海道における地域性×国際性の融合
- なぜ今、ホテルバーに「地域性」が求められるのか
- マンダリンオリエンタル東京「マンダリンバー」:江戸切子×現代デザイン
- アマン京都「ザ・リビング パビリオン」:日本庭園思想の室内化
- シックスセンシズ・ブータン:ブータン建築×サステナブルラグジュアリー
- ベルモンド・コパカバーナパレス(リオ):ブラジルモダニズムの結晶
- ザ・リッツ・ロンドン「リボリバー」:英国貴族文化の現代的継承
- フォーシーズンズ・バリ「サヤンバー」:バリ伝統建築の再解釈
- セントレジス・ニューヨーク「キングコールバー」:マンハッタンの歴史を体現
- パークハイアット東京「ニューヨークバー」:東京の夜景という最高の借景
- まとめ:地域性×国際性が生み出す新たな価値
世界のホテルバーデザイン10選:地域文化を昇華させた珠玉の空間
「バーテンダーがカクテルを作る所作を見ていると、まるで茶道を見ているような気持ちになるんです」
北海道で新たに計画されている高級ホテルのラウンジ設計を手がけた際、クライアントから伺った言葉です。その瞬間、私たちユーロJスペースが追求すべき方向性が明確になりました。グローバルスタンダードを満たしながら、その土地にしかない物語を空間に織り込むこと。
2024年、世界の高級ホテルバーは新たな進化を遂げています。もはや「豪華な内装と高額なドリンク」だけでは富裕層を満足させることはできません。彼らが求めているのは、その場所でしか体験できない文化的な深みなのです。
本記事では、ユーロJスペースが北海道で実現した最新プロジェクトを筆頭に、世界各地の高級ホテルバーがどのように地域文化をデザインに昇華させているかを分析。単なる豪華さを超えた、新しいラグジュアリーバーの潮流をお届けします。
1. ユーロJスペース実績:北海道における地域性×国際性の融合
デンマークデザインと北海道産材の出会い
2024年に設計を手がけた北海道の高級ホテルプロジェクトにおいて、私たちは「北欧×北海道」という新しい文化融合に挑戦しました。
空間コンセプトの核心
- 照明計画:Louis Poulsen社製品を軸とした光環境設計
- 素材選定:北海道産ウォールナット材による温かみの演出
- 造作家具:地元工房による4,600mm級カウンターの製作
- アート要素:アイヌ文様を現代的に解釈したオリジナル照明
この設計において特に重視したのは、「国際的な洗練」と「地域の温もり」の両立です。Louis Poulsenの機能美は、北海道産材の素朴な美しさと出会うことで、新たな価値を生み出しました。
屋内外のシームレスな繋がり
北海道の雄大な自然を最大限に活かすため、ラウンジからテラスへの動線を完全にバリアフリー化。季節を問わず、内と外の境界を感じさせない設計としました。
設計上の工夫
- ガラスパーティションの可動式採用
- 床材の内外統一による視覚的連続性
- 暖房設備の戦略的配置による通年利用の実現
この手法により、坪単価500万円クラスの価値創造に成功。地域の自然資源を「借景」として取り込むことで、建築コストを抑えながら空間価値を最大化する戦略が功を奏しました。
2. なぜ今、ホテルバーに「地域性」が求められるのか
グローバル化への反動としてのローカル回帰
パンデミック以降、世界の富裕層の価値観に大きな変化が生まれています。
富裕層の意識変化(2024年McKinsey調査)
- 「どこでも同じ」への拒否感:87%
- 「その土地ならではの体験」重視:92%
- 「文化的真正性」への投資意欲:89%
- 「Instagram映え」よりも「記憶に残る体験」:94%
この変化は、ホテルバーのデザイン哲学に根本的な転換をもたらしました。画一的なラグジュアリーから、地域性を活かしたオーセンティシティへ。この潮流を最も的確に捉えているのが、次にご紹介する世界のトップホテルたちです。
3. マンダリンオリエンタル東京「マンダリンバー」:江戸切子×現代デザイン
37階から見下ろす東京と、足元に広がる江戸の技

マンダリンオリエンタル東京:江戸切子の輝きと東京の夜景が織りなす空間
日本橋三井タワー37階に位置する「マンダリンバー」は、江戸の伝統工芸を現代的に昇華させた空間として、世界中のデザイナーから注目を集めています。
デザインの特徴
- 江戸切子シャンデリア:3,000個のクリスタルによる光の演出
- 職人コラボレーション:墨田区の伝統工芸士による特注グラス
- 和紙アート:壁面を彩る現代和紙作家の作品
- カクテルプレゼンテーション:江戸前寿司の所作を取り入れたサービス
特筆すべきは、地元職人との継続的な協業体制。単発の発注ではなく、季節ごとのグラスウェア更新や、限定カクテル用の特注品制作など、生きた伝統工芸の場となっています。
4. アマン京都「ザ・リビング パビリオン」:日本庭園思想の室内化
借景技術の現代的解釈
2019年開業のアマン京都では、日本庭園の「借景」思想をバー空間に応用した革新的な試みが実現されています。
空間構成の妙
- 重層的な景観設計:近景(庭園)・中景(森)・遠景(山並み)の3層構造
- 季節の可視化:大開口による四季の変化の取り込み
- 間(ま)の演出:あえて装飾を排した空間による余白の美
- 光の制御:障子を通した柔らかな自然光の活用
アマン京都の成功は、「引き算の美学」を極限まで追求した結果です。ユーロJスペースが北海道で実践した「素材の素直な表現」にも通じる哲学がここにあります。
5. シックスセンシズ・ブータン:ブータン建築×サステナブルラグジュアリー
GNH(国民総幸福)の空間化
ブータンの伝統建築様式を忠実に再現しながら、現代的な快適性を実現したシックスセンシズの挑戦は、文化保護と観光開発の理想的な融合として評価されています。
デザイン要素
- 地元産材100%使用:ブータン松による構造体から家具まで
- 伝統模様の照明デザイン:マニ車をモチーフにしたペンダントライト
- ホットストーンバス:伝統的な石焼き風呂の現代的解釈
- 瞑想スペース:僧侶監修による本格的な瞑想空間
重要なのは、これらが単なる「観光客向けの演出」ではないこと。地元コミュニティとの協議を重ね、文化的に適切な表現を追求した結果です。
6. ベルモンド・コパカバーナパレス(リオ):ブラジルモダニズムの結晶
トロピカルモダンの極致
1923年開業の歴史的ホテルが、2020年の大改装で見せた進化は、ブラジルモダニズムの新解釈として世界の注目を集めました。
デザインの革新性
- アズレージョタイル:18世紀ポルトガル様式を現代アートとして再構築
- ボサノバ・ラウンジ:音楽と空間の一体化設計
- 熱帯植物の室内森林:ロベルト・ブーレ・マルクスへのオマージュ
- カイピリーニャ・バー:360度回転するバーカウンター
特に印象的なのは、地元アーティストとの協働。単なる装飾ではなく、空間全体のコンセプトから参画してもらうことで、真正性のあるブラジル文化の表現を実現しています。
7. ザ・リッツ・ロンドン「リボリバー」:英国貴族文化の現代的継承
伝統と革新の絶妙なバランス
2024年にリニューアルを終えたリボリバーは、「21世紀の英国紳士クラブ」というコンセプトで、伝統的な英国文化を現代的に再解釈しています。

ザ・リッツ・ロンドン「リボリバー」:英国貴族文化の現代的継承
空間演出の特徴
- 図書館バー形式:貴重な初版本に囲まれた知的空間
- アフタヌーンティー・カクテル:紅茶文化とミクソロジーの融合
- チェスターフィールドソファ:現代的な素材による伝統様式の更新
- 執事サービス2.0:AIと人間の協働による究極のパーソナライゼーション
リッツの挑戦は、歴史の重みを活かしながら、現代性を失わないという難題への回答です。これは、日本の老舗旅館や歴史的建造物の活用にも通じる普遍的なテーマといえるでしょう。
8. フォーシーズンズ・バリ「サヤンバー」:バリ伝統建築の再解釈
熱帯建築の環境応答性
ウブドの渓谷に位置するサヤンバーは、バリの伝統的な集落構造を現代的なバー空間として再構築した傑作です。
建築的特徴
- アラン・アラン屋根:伝統的な茅葺きによる自然空調
- バレ構造:柱と屋根のみの開放的な空間構成
- 聖なる方位:バリ・ヒンドゥーの方位観に基づく配置
- 水の演出:浄化の象徴としての水盤と滝
ユーロJスペースが北海道で実践した「内外の境界を曖昧にする」手法は、このバリの事例からも多くを学んでいます。気候条件は異なれど、自然との共生という思想は普遍的です。
9. セントレジス・ニューヨーク「キングコールバー」:マンハッタンの歴史を体現
ブラッディマリー発祥の地としてのストーリーテリング
1904年開業、ブラッディマリー発祥の地として知られるキングコールバーは、歴史そのものを最大の資産として活用しています。
歴史の可視化手法
- マックスフィールド・パリッシュの壁画:1906年制作の巨大壁画の保存と演出
- アールデコ様式の維持:定期的な修復による authenticity の保持
- カクテルヒストリー展示:バーの歴史を物語る常設展示
- レシピアーカイブ:120年分のカクテルレシピのデジタル化と提供
キングコールバーの戦略は、「歴史は最高のコンテンツ」という真理を証明しています。新規開発においても、その土地の歴史や文化を掘り起こし、デザインに組み込むことの重要性を示唆しています。
10. パークハイアット東京「ニューヨークバー」:東京の夜景という最高の借景
映画「ロスト・イン・トランスレーション」効果の戦略的活用
地上200m、52階に位置するニューヨークバーは、東京の夜景を最大の装飾として活用した空間設計の好例です。
空間価値の最大化戦略
- ガラス面の最大化:構造限界まで広げた開口部
- 照明の最小化:夜景を引き立てる controlled darkness
- ジャズとの融合:アメリカ文化と日本の融合点としての音楽
- 映画ロケ地活用:文化的アイコンとしてのブランディング
パークハイアットの成功は、立地という資産を最大限に活用することの重要性を示しています。ユーロJスペースでも、各プロジェクトの立地特性を詳細に分析し、その場所ならではの価値創造を心がけています。
まとめ:地域性×国際性が生み出す新たな価値
ユーロJスペースが提案する「ローカル×グローバル」の方法論
世界のトップホテルバーを分析して見えてきたのは、成功する空間には必ず「物語」があるということです。
価値創造の5つの原則
- 地域素材の現代的解釈
- 伝統工芸の新しい使い方
- 地元産材による温かみの演出
- 職人との継続的協業
- 文化の重層性の表現
- 異文化の出会いによる新しい価値
- 歴史と現代の対話
- グローバルスタンダードとローカルアイデンティティの融合
- 自然との関係性の再構築
- 借景技術の現代的応用
- 内外の境界の曖昧化
- 環境応答型デザイン
- ストーリーテリング
- 空間に込められた物語の可視化
- 歴史的文脈の活用
- 体験としての価値創造
- サステナビリティとラグジュアリーの両立
- 地産地消による環境負荷低減
- 文化保護と経済開発のバランス
- 長期的価値の創造
投資対効果の現実
私たちが手がけた北海道のプロジェクトを含め、これらの事例が示すのは、適切な文化的付加価値が経済的成功に直結するという事実です。
成功指標
・客単価向上率:通常の1.5-2倍 ・リピート率:70%以上(業界平均40%) ・SNSでの拡散効果:投資額の3-5倍の広告効果 ・地域経済への波及効果:直接雇用の2-3倍
次なる挑戦へ

地産地消の家具と北欧デザインが融合した客室空間
ユーロJスペースは、これらの知見を活かし、日本各地の遊休施設や歴史的建造物を、世界基準のラグジュアリー空間へと転換するプロジェクトを推進しています。
北海道での実績が示すように、地方都市であっても、適切な戦略とデザインがあれば、1泊10万円以上の価値創造は十分に可能です。
重要なのは、その土地の文化や自然、歴史を深く理解し、それを現代的な快適性と融合させること。そして、それを実現するための緻密な設計と、地域との継続的な協業体制の構築です。
あなたの地域にも、まだ発見されていない「物語」が眠っているはずです。
その物語を、世界が憧れる空間体験へと昇華させる。それが、私たちユーロJスペースの使命です。
建築の、その先へ。
地域性を活かした高付加価値空間の創造にご興味をお持ちの方は、ぜひお問い合わせください。
本記事でご紹介した北海道のプロジェクトを含め、地域性を活かした高付加価値空間の創造にご興味をお持ちの方は、ぜひお問い合わせください。初回のコンサルテーションは無料で承っております。
株式会社ユーロJスペース
建築の、その先へ。